2012年04月13日

さよならディストピア



さよならディストピア / 2012 Japan

監督 : 野江 早杷子
製作 : ピンクじゃなくても
(映画「さよならディストピア」公式サイト)

全編をiPhoneで撮影という意欲作。
"宣伝文句"にとどまらず、制約のある
iPhone特有の画作りを、素晴らしいセンスで
最大限に活かした映像が見られました。

それは例えば、手ぶれであったり、
コントラストの限界であったり。
色的な輪郭の曖昧さ、と言うのでしょうか。
黒は黒、白は白、空は空といった具合に
その対比がごちゃごちゃとせず、
シンプルで効果的に画面を構成しているなぁ、と。
日常から切り取られた、
その一瞬の風景の美しさにハッとしました。

手ぶれ、に関してですが、iPhoneの揺れは
他のビデオカメラとは質が違う気がします。
あまり映像の中身をはっきりと認識できない事が
上手く演出として使われていた場面が多くあり、
次にカメラを固定する事で、
映像の雰囲気にはっきりとした対比が出来上がる。
うん、これもコントラストですね。見事。

そして音響がまた素晴らしい。
サイレンや鳥の声、足音や音楽が憎いほどに上手い。
同時に鳴らす音にも対比があり、
作品の世界観を何倍にも高めていると思います。

物語は終末世界の叙情詩。
常識の"今"が壊れてしまった後を描いたもので、
そこにはやはり物悲しさが満ちていて、
ある意味では穏やかな日常ともとれる無気力さが。
30分弱と短い作品ですが、
始まりから終わりまでがしっかりと完成されています。

これ以上はなく身近になった撮影機材として
日常に迫るリアリティがあり、
本当に"iPhoneならでは"の撮影技術で、
暗めにぼやけた映像や光が入り過ぎる事を
これほど上手く演出として利用した手腕はお見事です。

限界を感じる点としましては、やはり手ぶれの質。
あまり多用すると作品全体に
少しごちゃついた印象を与えるのではないでしょうか。

以上、
全編iPhone撮影という点にこだわったレビューです。
ここからは少し内容について。
ほんの少しネタバレ感がありますので、
出来れば視聴後にお読み頂けると幸いです。

全体的に、動きは穏やかで薄暗く、
心情の描写は風景に現れていますよね。
劇中でもiPhoneでの自画撮りを挟む事で
また強く身近さを感じ、
世界観への没入を誘ってくれました。

ゾンビ好きとしましては、雰囲気重視の作りは
少し物足りないかなと思ったんですが、
最後にしっかりとやってくれましたね。
ここの映像演出と演技、音も凄く好きです。

一つだけ残念だったのが英語字幕が入っていた事。
ドア一枚向こうの世界の様なリアリティが
見慣れない英語字幕がある事で少し入りきれなかった。

※お聞きしたところ、
近日中に字幕なしバージョンの公開があるそうです。
二度目はこれをお待ちして、
またじっくりと楽しませて頂きます。

(4/18 追記)

公式サイトにて英字幕無し版が選択出来ます。

しかし素晴らしい完成度でした。
一言で表すなら"対比の調和"と言わせて頂きたい。
このセンス、本当に凄いと思います。

まだまだ、何度も拝見させて頂きます。
素晴らしい作品と作り手の方々に喝采を。拍手!